さて、書きますと言いながら、ずっと書いていませんでした。。
夏が終わって急激に寒く暗くなるこの季節。
唯一の楽しみは・・・そう!
イギリスで大人気のテレビ番組
【Strictly Come Dancing】ストリクトリー・カム・ダンシング!
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いろんな分野のセレブリティーとプロのダンサーがペアを組み、毎週課題曲を練習して披露。
ジャッジと視聴者の投票で、毎週1組が脱落していくという勝ち残りダンスコンペ番組です。
今年もいつ始まるのかだいぶ前からチェックして、カレンダーにも追加して、当日観ようと思ったら・・・。
翌週の金曜日(今日)に延期とのこと。
クィーンが亡くなられて、緊急特番ばかりだったので、こればっかりはしょうがない。
せっかくなので、書いていなかった昨年2021年のストリクトリーおさらいしていきます!
この番組についてはコロナ禍のイギリスで、キラキラのひとときをありがとう!!①など、過去記事で詳しく書いているので、ぜひ読んでみてくださいね。
Contents
圧倒的人気で優勝のローズとジョヴァンニ
まずは、こちらの動画をどうぞ。
1分23秒のところで「?!」となりますよね??
実は、この軽やかに踊っている女性、ローズ(Rose Ayling-Ellis)は生まれつき耳が聞こえない聴覚障がいを持った女優さん。
イギリスのご長寿番組、イーストエンダーというメロドラマにも出演していました。
ほんの十数秒の静寂ですが、音のない世界で踊るということはどういうことなのか、ハッとして胸が熱くなります。
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初めに結果を言ってしまいますが、昨年は、聴覚障害というハンデを物ともせず、圧倒的人気と素晴らしいダンスで、ローズと彼女を指導したプロダンサー、ジョヴァンニのペアが優勝しました。
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そもそも耳が聞こえないのに音楽に合わせて踊れるのか?
この番組には、パラリンピックのアスリートなど、障がいを持ったセレブリティーが、毎シーズン参加しています。
今回は初の聴覚障がい者としてローズが2021年シリーズに参戦。
「音楽が聴こえないのに、リズムに合わせてダンスが出来るのか。」
視聴者として疑問に思った人がほとんどだろうと思います。
身近に聴覚障がい者がいない限り、実情を知ることは難しいのが現状ではないでしょうか。
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テレビを通して自然体で語り、熱心にダンスを練習するローズの姿がとでも印象的です。
仕事中はいつでも手話通訳者が視線の先にいて、何が起こっているのか理解しているそうです。
「周りの話を理解する手段が与えられたのであれば、他の人たちと同様に仕事ができる。」
「障がい者だから・・・と想定された自分像が間違っていると証明するのが好き。だからいつもちょっとばかり頑張ってみるの。」
とローズ。
音楽に乗って踊るのではなく、拍子をとってカウントしながら踊るのだそう。
先生のジョヴァンニも、いつもとは違うアプローチでダンスを指導。
ローズにとってもジョヴァンニにとっても未経験の挑戦です。
補聴器の電池が切れて何も聞こえない!
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茶化して笑うジョヴァンニに「It's not funny!(笑えない!)」。
しかし、これは意地悪ではなくイジリなんですね・・・。
一見可憐な清純派に見えるローズですが、しっかりやり返しているのでご心配なく。
She can dance! ファイナルまでの軌跡
初ダンス披露の Week1。
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いや、ちゃんと踊れる(なんて言うと上から目線ですよね)・・・それどころかどんどん上達。
Week 3のフォックストロットは映画がテーマの週。
ローズだけに、タイタニックのローズ を演じていますが、情感のこもった表情もさすが女優さん。
Week 6のタンゴはハロウィーンテーマ。
気迫を感じるダンスも演技も素晴らしい。
そして、ダンスを始めて2か月、Week 8が冒頭のフリースタイルのサイレント・ダンスです。
このダンスは、BAFTA(英国アカデミー賞)で"Must See Moment Award(絶対見るべき瞬間賞)”を受賞しました。
そしてWeek 11のアメリカンスムース。
指先からつま先まで、軽やかで表現力豊か。
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そしてWeek 12のアルゼンチンタンゴ・・・3か月でこんなプロみたいに上手に!
ジャッジの判定も40点満点!
先生のジョヴァンニもご満悦。
聴力が無くても、音楽が聴こえなくてもくても・・・表現力やリズム感が無いわけではない・・・踊れないわけではない!
「障がい」という大きなレッテルを貼られて、いろんな才能、能力が隠されてしまっている障がい者も多いはず!
実はかなりの面白キャラ
障がいを持っているにも関わらず、全くそれを感じさせないダンスも素晴らしいのですが、彼女の人気の秘密は、その人柄によるところも大きいのでは?
完全スッピンで全く気取りなく、練習風景を公開。
「みんなジョヴァンニがどれだけキモイ男か知らないみたいだから教えてあげる。」
「噛み終わったガムをゴミ箱に捨てに行くのがめんどくさいからって・・・見て!」
「オェー。ちょっと説明してよ。」
「別に。っていうか、俺のじゃないし。ローズのだし。」
「!」
そして、その後の変顔がまた・・・。
陽気なシチリア人(ジョヴァンニ)もビックリの・・・まさかのこのキャラ。
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シーズン中、2人のおもしろ動画が次々に公開され、仲良しっぷりが話題になり、大人気。
障がい者に対して、勝手に上から目線で「可哀そう」と同情したり、困難に負けずに頑張る健気なイメージを抱いて「感動をありがとう・・・」なんて思ったり・・・。
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良い意味でそういったイメージをぶち壊す彼女。
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@roseayling.ellis We are so excited for you to see our dance for this week!!! Keep tuned in we're up very soon!! 💃 #strictly @bbcstrictly #rose #giovanni #fyp #viral ♬ Symphony (feat. Zara Larsson) - Clean Bandit
そして、既にお気づきかとは思いますが、この変身っぷり!
お化粧ちゃんとしたら・・・おやおや~!すっごい美女!!
・・・なのに気取らない面白キャラで、イギリス国民のハートを鷲掴み!
最高視聴率57%!?英国民が障がい者や手話に関心を持つきっかけに
英紙オンライン版The Guardianによると、番組放映中、最大1230万人ものイギリス国民がストリクトリーファイナル観ていたそうな。
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人々がテレビで障がい者が活躍するのを見ることで、障がいについて理解を深め、健常者と障がい者との障壁を壊すことができる。
聴覚障害の王立国立協会の代表者も、ローズのテレビでの活躍は、多くの視聴者に聴覚障がい者のコミュニティーや文化への"美しい洞察”を与えたと語っています。
聴覚障がいを持つ子供たちの学校をサプライズ訪問してBAFTAノミネートをお祝いする2人。
その後、見事 "Mast See Moment Award” を受賞!
Hearing aid(補聴器)を付けたバービー人形 をお披露目するローズ。
彼女自身も、子供の頃、バービー人形の耳に自分のように補聴器を描いてお人形遊びをしていたそう。
「子供の頃に多様なキャラクターを取り入れて遊ぶことは、とっても大事だと思います。それによって、世界には自分とは異なるいろんな人がいることを学び、奇異の目で見ること無く受け入れ、それが普通のことだと考えられるようになると思うんです。」と、ローズ。
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イギリス手話 BSL(British Sign Language)が公用語のひとつに!
そして、なんと!
以前から検討されつつも実現されてこなかった「手話の公用語化」。
手話通訳者を1日雇うのに£290(今のレートだと4万5000円くらい)かかるそうで、それを全国的に病院などで利用できるようにするとなると、実現までの一歩がなかなか進まないのも頷けます。
しかし、ここにきて大きな追い風が吹きます。
テレビでのローズの活躍がみんなの心を動かし、世論を動かし、政治家をも動かしたのです。
The British Sign Act 2022(イギリス手話法案2022)がついに可決。
ウェールズ語やゲール語などと同等に公用語として認められ、今後、病院や公共施設、学校教育などでもBSLにアクセスできるようになるはず。。
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2年前のコロナ禍当時には、今となっては王妃となったカミラ夫人も番組にコメントを寄せています。
視聴者層広すぎ!な国民的人気番組の威力は凄い。
YouTubeも良いけど、テレビの力ってまだまだ捨てたもんじゃないですよね!