今回紹介するヴィーラスワミー【Veeraswamy】は、イギリスで現存する最古のインド料理レストランです。
インド人がイギリスで初めてインドカレーを提供したのは、1810年にオープンしたヒンドスタン・コーヒーハウスと言われていますが、レストランというよりはカジュアルな食堂で、1年足らずで閉店してしまいます。
ヴィーラスワミーは、インド独立以前の1926年にオープンし、ファインダイニングと言えるフォーマルなレストランとしては、本場インドも含めて一番古いとも言われています。
訪れたゲストたるや、ヨーロッパやアラブの王族やインドの初代首相ネルー、インディラ・ガンジー、ウィンストン・チャーチル、チャーリー・チャップリン・・・と、そうそうたる顔ぶれ。
また、1926年と言えば、先日お亡くなりになったエリザベス女王がが生まれた年でもあります。
ロンドンの繁華街、ピカデリーサーカスからすぐという立地で、今も昔も静かにたたずむ高級インド料理のレストラン。
華麗な歴史と優雅な雰囲気
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ロンドン市内中心部の目抜き通り、リージェントストリート。
統一感のある石造りの建物がカーブを描いて立ち並ぶ美しい大通りです。
ヴィーラスワミーの入り口は、ピカデリーサーカスからオックスフォードサーカスへ向かうリージェントストリートから、小道に入るアーチの下。
狭い入口で見過ごしてしまいそうですが、入り口前にドアマンがいて、専用のエレベーターへ案内してくれます。
通常は制服に帽子とケープもあるのですが、12時開店ちょっと前に入ったのでまだ準備中・・・にも関わらず、笑顔で迎えてくれました。
エレベーターに乗ると目に入るのが、こちらのレストランにゆかりのある人々の写真。
左上の写真の紳士が、1926年にこのレストランを創立したエドワード・パーマー氏。
彼は初代インド総督と、ムガール帝国のプリンセスのひ孫にあたるアングロ・インディアン(イギリス系インド人)で、ハイデラバードで生まれ育ち、薬学を学ぶためロンドンに留学。
そこでスパイスビジネスを始め、1924年の大英帝国博覧会にて、今で言うポップアップレストランを出店したところ大盛況。
その2年後には現在と同じ場所に店を構えます。
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創業当時の店内の様子。
英領インドから帰任した将校や、王侯貴族、セレブリティーがインド料理を楽しんだのだそう。
そして現在の店内の様子。
今回はリージェントストリートを見下ろせる窓側の席でした。
インドの絵画やインド風の装飾が随所にあり、カラフルながらも品良く落ち着いた雰囲気。
3セクションに分かれており、更に店内の階段を上がると個室も。
でも考えてみたらお釈迦さまもインド人ですよね。
オーナーが変わるとともに何度か改装され、現代的な内装になったこともあるのですが、現在は創業当時のお店に寄せた雰囲気やインテリアになっているそうです。
宮廷料理と洗練されたインドの地方料理
元々はアングロインディアン料理(イギリス人好みにアレンジされたインド料理)が主流だったそうですが、現在は系列のファインダイニングであるチャツネマリーや、アマヤを含む、MW Eat チャツネマリーグループの傘下に入りミシュランガイドで1つ星を獲得しています。
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グループオーナー陣もインド料理界の大御所で、味はお墨付き。
最近の傾向として、インドの地方料理やストリートフードなど、本場インドの本物志向が流行していることもあり、エグゼクティブ・シェフのウダイさん(Udai Salunkhe)の率いるインド各地出身のシェフ達により、洗練された地方料理やストリートフード、由緒正しき宮廷料理など、多彩なインド料理が楽しめます。
コースではなくアラカルトからオーダー
まずは、ラージ・カチョリ(Raj Kachori)から。
ランチのアラカルトメニューには無かったのですが、お店の人に聞いてみると、シェフに確認してくれディナーメニューからオーダーできました。
こちらのお店の代表的な料理の1つで、質素なストリートフードを王様が食べるような洗練された逸品に仕上げたそう。
カチョリと言っても揚げパンではなく、巨大なダヒプリっぽい感じ。
ダヒプリとは?
ダヒプリのプリは、パニプリと同じく、パンというよりはシェル(殻)のようなパリっとしたひとくちサイズのスナック。
ダヒプリはシェルの中に茹でたジャガイモやひよこ豆などの具が入り、甘いヨーグルトやタマリンドソース、ミントソース、ザクロやセヴ(細い乾燥ヌードルを細かく砕いたもの)などがトッピングされています。
パリパリのセモリナ粉の大きなシェルに、豆やら芋やらスプラウトやら、いろんなものが入っています。
シュワッと軽い柔らかシュー生地のような・・・甘くないケーキのようなものが面白い食感。
聞いてみるとLentile Roll(レンズマメのパン)だそうな。
甘いヨーグルトと甘酸っぱいタマリンドチャツネ、ミントコリアンダーソース・・・いろんな味のハーモニー。
パリッとシュワッとトロッと、食感も素敵です。
そしてお次はPatiala Shahi Raan(英語ではパティアラ・ラムシャンクと表記)。
Patialaはインド北部パンジャーブ州の地名で、Shahiはロイヤルの意味。
Raanは羊や山羊の脚の意味ですが、メニューの訳にラムシャンクとあったので、ラムの骨付きスネ肉を使っている模様。
こちらもお店のHPなどに出てくる代表的な料理の1つ。
6時間煮込んだラムをフィロのような薄い生地を何枚も重ねて包んで焼いてあり、ボーンマロウソース(骨髄ソース)をかけて頂きます。
パティアラ宮殿の宮廷料理にインスパイアされたメニューなのだそう。
こちらもリクエストしてディナーメニューからオーダーしました。
骨を外して半分に割ると、パリパリのパイ生地の中に柔らかく煮込まれたラムがギッシリ。
骨髄ソースは、黄色い色だけれどココナツ風味ではなく、ちょっとスモーキーで、サフランの香りもあり今まで食べたことのない味でした。
今回は友人とシェアしたので、更にメインでもう一品。
Roast Duck Vindaloo(鴨のヴィンダルー)。
ヴィンダルーはポルトガル領だったゴアのワインビネガー入りのカレー。
程よい酸味と旨味たっぷり。
ヴィンダルーは通常は辛いのだけれど、こちらのものはマイルド。
なんとなく日本っぽい味と思ったら、ラッキョウ添え?
・・・でも形は先が尖がってるからエシャロットかペコロスかな?
味はラッキョウでした。
そして、付け合わせのパイナップルカレー。
カレーリーフとココナツミルクの黄金コンビにジューシーなパイナップルたっぷりの甘いカレー。
これを鴨のヴィンダルーと混ぜて食べても美味しかった。
レモンライスと一緒に頂きました。
他にもこんなメニューが
Indulge in Chana Bhatura for Sunday lunch with family and friends - a scrumptious chickpea curry and paneer with a fluffy poori pic.twitter.com/w6d7S3xdR5
— Veeraswamy London (@theveeraswamy) September 16, 2017
Chana Bhatura(チャナ・バトゥーラ;ひよこ豆カレーとぷっくり膨らんだ揚げパン、プーリ)ランチコースにも。
A delicious winter warmer is the Kundan Kalian from the palace of Rampur - Welsh lamb with fragrant and sophisticated spices and gold leaf pic.twitter.com/USbRWfPOvz
— Veeraswamy London (@theveeraswamy) March 17, 2018
Kundan Kalian(クンダンカリアン)はインドのランプールの宮廷料理。
また、1926年当時からのメニューMulligatawny(マリガトウニースープ)はランチメニューにもあります。
旅行者にもロンドンの美味しい思い出になると思います。
訪問日:2022年10月7日
基本情報
お店の基本情報です。
メニューの内容は定期的に変わります。
営業時間にも変動がありますので、お店のHP要確認。
・ E-mail info@veeraswamy.com
・ 店舗ウェブサイト http://www.veeraswamy.com/
電話番号 | +44(0)20 77341401 |
営業時間 | ランチ 火曜 - 金曜 12:00-14:00 、土曜日曜 12:30-14:30 |
ディナー 月火水金土曜 18:00-22:00、木曜 -22:30、日曜 -21:15 | |
定休日 | 無し(月曜はディナーのみ) |
住所 | Victory House, 99-101 Regent St., London W1B 4RS |
アクセス | 地下鉄ピカデリーサーカスから徒歩4分、グリーンパーク駅から徒歩8分 |