今回はロンドン中心部から外れた住宅街にある、ちょっぴりマニアックなインド料理を紹介します。
地下鉄ディストリクト線(緑)のウィンブルドン行きの途中にある人気の住宅街パットニー。
観光客があまり訪れることは無いエリアなのですが、カシミール料理が食べられるレストランがあると聞き、おひとり様ディナーで行ってみました。
他ではなかなか見ないメニューがいっぱい!
カシミールってどんなところ?
印中パ3国が領有権を主張するカシミール
カシミール地方は、インド最北部からパキスタンにかけての山岳地帯。
パキスタンや中国、アフガニスタンと国境を接するだけでなく、領有権について複雑な問題が現存するエリアです。
⇩赤い枠内が昔のジャンムー・カシミール州藩
緑色の部分はパキスタンの実効支配するカシミール北部、オレンジ色の部分はインドが実効支配するジャンムー・カシミール。
もともとジャンムー・カシミール藩は、住民の約80%はイスラム教で、藩王含めヒンドゥー教徒は少数派。
「パキスタン(イスラム教)かインド(ヒンドゥー教)かをそれぞれの藩王国が自由に決められる」という独立法により、難しい立場に立たされた藩王は、ジャンムーカシミールとして独立を考えていたのだそう。
しかし、パキスタン側から武力侵攻があったことにより、インド政府に派兵を求め、インドへの帰属に署名。
それ以後現在に至るカシミール紛争へと発展します。
なお、カシミールの一部、ラダックと呼ばれているエリアの東部にあるアクサイチンは、現在中国に実効支配されています。(ジャンムー・カシミール、ラダックともに2019年よりインド政府の連邦直轄領)
・・・印中パ3か国が領有権を主張し、今現在もくすぶるカシミール問題。
湖と山々の緑の美しい街、シュリーナガルは、標高1700メートルで夏でも涼しく、ムガール帝国時代の皇帝や、英国統治時代の英国人が避暑地として訪れていました。
カシミールの食文化
「カシミール料理」と言えば肉と米
もともと住民にイスラム教徒が多く、ヒンドゥー教徒もまた肉を食べるのだそう。
昔はヒンドゥー教徒も肉食が普通だったのだとか。
地理的に、ヒマラヤ山脈でインドの他のエリアと隔絶されていたため、菜食主義が増えるインドにあっても古来からの食文化をキープし肉食が続いているのだそう。
カシミール料理は大まかに、ムスリム料理、ムガール帝国由来の料理、カシミーリパンディットの料理の3つに分類されます。
また、少数派のチベット系仏教徒も肉を食べ、チベット由来の料理もカシミールでは人気だそうです。
北インドといえばナンやロティーなどパン系のイメージですが、カシミール地方はバスマティライスの産地でもあり、米もよく食べられています。
また、サフランの生産地としても有名で、ライスやスイーツの香りや色付けに使われています。
北の山岳地帯で寒い地域ということもあり、辛い料理が多いのも特徴とのこと。
イスラム教徒のフルコース、ワズワンとは?
カシミールのイスラム教徒にとって重要な食文化であるワズワン。
現地の言葉で「ワズ」はクッキング、「ワン」はショップを意味し、伝統的には36種類(うち15-16種類はノンベジ)とも言われるたくさんの品数のコース料理。
主要ホテルやレストランだけでなく、カシミールのお祭りの際にも提供される。
ノンベジは、魚、チキン、羊や山羊でビーフ料理は無い。
カシミール料理として有名なローガンジョッシュやグシュタバもワズワンで提供される料理のひとつなのだそう。
レンコンに緑茶・・・食材も特徴的
カシミール料理のイメージが湧いたところでいよいよ実食!
カシミール料理のレストラン、その名もそのまんま、カシミール【Kashmir】。
メニューを見ると、カシミール料理には赤い紅葉のマークが付いています。
前菜・・・これは何のケバブ?
さて、こちらは何かのケバブ。
いったい何でしょう?
答えは・・・
見出しでバレバレですが、ナドルケバブ、レンコンのケバブです。
メニューにロイヤルクミンシードを使用しているとあるのですが、調べるとロイヤルクミンとはShahjeeraの直訳で、キャラウェイのことなんですね・・・。
レンコンとジャガイモをマッシュしたものにスパイス類を混ぜて揚げ焼きしてあります。
ビーツのソースがかかっていて、ミントチャツネと一緒に頂きました。
お店の人が「辛いのは好き?」と言うので、嫌いではないと答えると、激辛ミントチャツネを別に持ってきてくれました。
ちなみにハート形はダイヤモンドジュビリー仕様で、普段は丸形のようです。
メインは悩んだ末グシュタバに
さて、今回は1人で行ったので、1人前。
あれもこれも食べてみたい物ばかりだったのですが・・・。
悩んだ末に選んだのは…グシュタバ。
見た目から白いカレー?・・・と気になっていました。
今回カシミール料理を予習して、是非とも食べてみたかった一品。
メニューの説明によると、ベルベットのように滑らかにミンチしたラム肉のミートボールと、風味豊かで辛くない白いヨーグルトのグレイビーの料理とのこと。
これはカレーというよりは、ラムミートボールのヨーグルトソースがけ、ヨーグルトシチューといった感じ。
テニスボールくらいの大きなミートボールがゴロンと2個分。
ヨーグルトの酸味とスパイスの風味はあるが、全く辛くは無い。
「The Dish for The King」として、前述のワズワンでデザートの前に提供される料理なのだそう。
ムガール帝国由来の料理はペルシア(今のイラン)ともつながりがあったりして興味深い。
カシミーリプラオ
米どころであり、サフランの産地としても知られているカシミールの魅力が詰まったプラオライス。
フワッといい匂いがします。
正体はケウラウォーター。
アダンの花を蒸留して作られるフローラルウォーターで、インドっぽいエキゾチックな甘い香り。
ビリヤニに振りかけられていたりもしますよね。
これがサフランの香りと相まって、とってもお洒落な良い香り。
ナッツやパニールチーズとの組み合わせも素敵です。
食後にチャイではなく緑茶
カシミールと言えばピンクチャイなのかな・・・と思っていましたが、こちらのお店にあったのは、カワ(Kong Kehva)。
緑茶ベースのサフランのお茶で、ナッツや、カルダモンなどスパイスが入っていて結構甘い。
でもなんだかホッとする優しい味。
他にも食べてみたい物がいっぱい!
ローガンジョッシュはその辺の近所のカレー屋さんにもあるイギリスでも定番のカレーメニュー。
とりあえず辛いってだけで、あまりインパクトが無いイメージだったんですが、どうやら本場カシミールのローガンジョッシュは全然違うらしい・・・。
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玉ねぎもトマトもジンジャー、ガーリックも使ってないとのこと。
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他では食べられないものがいっぱい!
カシミール料理のレストランはイギリスでここだけ!
なんだか、いつものインド料理とはひと味違って、とっても面白い体験が出来ました。
イギリスでカシミール料理を検索してみたんですが、お店のインスタにもあるように本物を食べられるのはおそらくここだけのようです・・・。
「カシミール」と名の付くお店はいくつか見つかったのですが、メニューを見るとたいていパキスタン料理で、ケバブやニハリはあってもグシュタバなどは見当たりません。
なかなかインドのカシミールまでは行く機会も無いと思うので、ロンドンで本格的なカシミール料理が食べられるのはとても嬉しいですね。
訪問日:2022年6月
基本情報
お店の基本情報です。
メニューの内容は定期的に変わります。
営業時間にも変動がありますので、お店のHP要確認。
・ E-mail infokashmirrestaurants@gmail.com
・ 店舗ウェブサイト http://www.kashmirrestaurants.co.uk/
電話番号 | +44 (0)20 7477533888 |
営業時間 | ランチ 金曜‐日曜 12:30 - 15:00 |
ディナー 日曜‐木曜 17:30-22:30, 金曜・土曜 17:30 - 23:00 | |
定休日 | 無し |
住所 | 18-20 Lacy Rd, London SW15 1NL |
アクセス | 地下鉄パットニーブリッジ駅・イーストパットニー駅ともに徒歩12分。South Western(鉄道)パットニー駅から徒歩6分 |