今回は本場インドで成功を収めているレストラングループ、Massive Restaurantsの人気店、ファルシカフェのロンドン店に行ってみました。
こちらのお店はインド国内に多数、更にロンドン、アラブ首長国連邦のドバイ、カナダのトロントとインターナショナルに展開しています。
ロンドン進出はコロナ禍以前の2019年1月。
ミシュランガイドにも掲載されており、過去ビブグルマンにも選ばれたこともあります。
実は私、FarziじゃなくFarsiだと思い込み、パールシー料理(ペルシャ系のインド料理)なのかと勘違いしていたのですが、Farziとは、ウルドゥー語で"イリュージョン”とか、"ウソみたい”などという意味なのだそう。
分子料理的なコンテンポラリーインド料理
・・・どうやら分子料理の技術やインターナショナルな食材などを使ったコンテンポラリー(現代的)インド料理のよう。
分子料理とは?
テイスティングメニュー&ワインペアリング
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今回は4周年記念でテイスティングメニューが半額だったため、ワインペアリングも付けて友人とランチを楽しんできました。
まず出てきたのは親指サイズの小さくて可愛らしい・・・なにか。
揺らすとフルッフル!
何でしょう、これ?
メニューによるとパニプリなのだそう。
中身はどうなってるのかな?と半分に噛んでみると・・・。
瞬時に液化!
普通のパニプリも噛まずにひとくちで食べますもんね・・・。
味はミントやタマリンドの味がして確かにパニプリです。
イギリスのスパークリングワインと一緒に頂きました。
続いてはこちら。
ローストしたアボカド、塩漬けマグロとライスパフのベル。
いわゆるベルプリなんですが、ちょっと面白い。
ライスパフ(ポン菓子的なもの)が市販のものと違い、敢えておこげっぽく焦がしているのかカリッカリで香ばしい。
マグロの塩漬けを細かくキューブ状に切った物が入っており、タマリンドソースの甘酸っぱさと相まってこれは日本人も好きな味。
そしてお次は・・・。
「Aburi Salmon」炙りサーモン、グラニースミスのココナツタイガーミルク、イクラ、ハーブオイル。
メニューだけ見ると和を意識?いや、タイガーミルク?何のこっちゃ?・・・と想像がつきませんが、彩りもキレイなひとさら。
ココナツミルクに炙ったサーモンが入っていて、イクラ・・・ではなく、トビッコがトッピングされています。
・・・ココナツミルクと生魚。
微妙な組み合わせに感じますが、サーモンにオレンジの香りづけがしてあったり、ココナツミルクも少し酸味があってサーモンにとても合います。
「タイガーミルクってなに?」とお店の人に聞いてみたところ、酸味のある魚用のココナツミルクとのこと・・・。
帰宅してから調べてみると、このタイガーミルク、スペイン語では「レチェ・デ・ティーグレ」と呼ばれるセヴィーチェ用の魚介だし汁の事なんですね。
ココナツミルクとグラニースミス(青りんご)で味付けした魚介のだし汁。
インドの白ワイン(ソーヴィニヨンブランとシャルドネのブレンド)を合わせて飲みつつ、そんな疑問を抱く間もなく次々と面白いものが運ばれてきます。
メニューによると、ワイルドマッシュルーム・チャイとのこと。
白い謎の粉(トリュフオイルクラム)と乾燥ワイルドマッシュルームをお茶碗に入れて、鉄瓶に入ったマッシュルームコンソメを入れて頂きます。
トリュフオイルクラムは、スープをかけると溶けてトリュフの香りだけが残る不思議な粉。
全然チャイではなくちょっとピリ辛のキノコのスープなのですが、ネーミングも含め遊び心があって面白い。
あったかスープでホッとひと息ついたところで次のお皿。
手前はChicken Karaage・・・鶏のから揚げ。
奥は山羊のファルシロシェ。
みんな大好き、お馴染みの日本の唐揚げがこんな姿に。
平たく揚げられた大きな唐揚げにピリ辛チリヨーグルト、更にほんのり甘い堅揚げ紫芋のチップスをトッピング。
その奥に鎮座するファルシロシェ=ウソみたいな石ころ。
山羊肉のスコッチエッグ風かな?と思ったけれど、卵の白身が無いんですよね・・・。
とろとろの黄身が火の通ったひき肉の中に入っているのはなんだか不思議。
どうなってるのかな・・・と思ったら、なかなか手の込んだ一品でした。
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ロンドン店のヘッドシェフ、ドゥワニ・アガワル【Dhwani Agarwal】さんがトリックの種明かしをしてくれています。
海塩と砂糖に漬け水分が減り濃厚になった卵黄をいったん凍らせてから、スパイシーな山羊ひき肉で包み、衣をつけているとのこと。
このワイルドライスのパフがまた、クリスピー&クランチーな食感とお焦げの香ばしさがとても良い。
ニュージーランドのピノノワールと一緒に頂きました。
そしてお次は?
また何やら・・・おぉ、チャッカマン登場。
メニューによると、Fired Halibut Pollichathu(炎のポリチャドゥと言えばよいのでしょうか・・・)
料理名ではHalibut(オヒョウ)とありますが、メニューの説明書きではCod(鱈)とあります。
後日お店の人に聞いてみたところ、通常は鱈なんでそうですが、この日はオヒョウだったようです。
ポリチャドゥとはローストとかグリルとかいう意味だそうで、南インド、ケーララ州のバナナの葉に包んでローストした魚料理のことだそう。
着火するやいなや、メラメラと一瞬で燃えた後に現れたのは、白身魚のバナナリーフ包み焼き。
燃えた後の灰が残らないのが不思議でお店の人に聞いてみたけれど
「ただの紙」とのこと。
いやいや、普通は煙が出て灰が残るでしょ。
炎の演出が終わると同時に運ばれてきた「CTM」ことチキンティッカマサラ、ダブルバター・ダル・マカニ、発酵ガーリックナン。
これまでのメニューは、ちょっぴりずつパフォーマンスを楽しむ感じで食べていたけれど、この3つは奇をてらわない定番メニュー。
そうは言っても発酵させたガーリックのナンだったり、ダブルバター使いのダルだったり、ひと工夫されていて、どれも良いお味。
チキンティッカマサラは、チキンがとっても香ばしくて印象的でした。
最後にデザートが運ばれてくる頃にはお腹いっぱい!
そしてあっという間に2時間以上過ぎていて、友人はお子さんのお迎え時間のタイムリミットが来てしまいました。
デザートはまずゴンドラジレモンのチーズケーキ。
ゴンドラジレモンとは、バングラデシュのシレット付近で収穫される香りのよいレモンの一種なのだそう。
そして食後のお口直しに、パーンマカロンとムクワスキャンディー。
パーンは噛みタバコのベテルナッツ(ビンロウジュの実)やナッツ類、スパイス類などがベテルリーフ(キンマ)に包まれたもの。
噛みタバコとしてだけでなく、消化促進やマウスフレッシュナーとして食後に食べる習慣があります。
生の葉っぱに包まれたパーンは食べたことあるけれど、ベテルナッツ/リーフ単体で食べたことが無いので味がよく分からないのですが、マカロンはちょっとぼんやりした味でした。
ムクワスもまた食後の清涼剤であり、消化促進剤。
Edible Paper(オブラート)に包まれたムクワスは、砂糖でコーティングしたフェンネルだけでなく、複雑な香水みたいな華やかな香りが口に広がって楽しい食事の締めくくりにピッタリでした。
現代的で洗練された店内
隣りにも劇場があり、ミュージカルやお芝居の前の食事におススメ。
一見インド料理のレストランには見えないオシャレな内装です。
入口を入り右手に地下へ降りる階段、左にバーエリアとメインダイニング。
バーカウンターも本格的で「ハイテク・カクテル」が人気なのだとか。
階段を降りると地下にもダイニングルームが。
日中は日の光が入りますが、店内は間接照明でオシャレで落ち着いた雰囲気。
奥はオープンキッチンになっています。
地上階の奥にはプライベートルームも。
他にも気になるメニューやカクテルいろいろ
現代的なインド料理だけではなく、世界のいろんな料理をインド風にアレンジ。
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イタリアのチーズ、ブッラータが、ほうれん草とカーボロネロ(黒キャベツ)でインド風に。
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アメリカンなエッグロワイヤルも、タンドール窯で焼いたサーモンとカダイマサラでアレンジしたオランデーズソースでインド風に!
今回はワインペアリングだったのですが、ニュージーランドなどニューワールド系メインのセレクションで、お料理と合っていて美味しかったです。
ミシュランガイドのコメントにもある「ハイテク・カクテル」。
ラボ(研究室)と呼ばれるキッチンで創り出される分子料理的なカクテルも飲んでみたい。
オーナーはインド料理界のプリンス?
こちらのレストラン、インドのデリー近郊の街、グルガオンに1店舗目を出店後、今やインド国内のみならず、ドバイやトロントにも進出。
調べてみると、シェフ名よりもまず出てくるのはオーナーのゾラワラ・カルラ【Zorawara Karla】という名前。
ファルシカフェの他にもたくさんのレストランをプロデュースし、海外にも展開するやり手のレストラン実業家のよう。
インド料理の皇帝の息子
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ゾラワラさんについて調べてみると出てくる「インド料理界のプリンス」という肩書き(?)
どうやらこの写真の隣にいるご老人、今は亡きジグス・カルラ【Jiggs Karla】さんがインド料理界の帝王で、その息子=プリンス・・・ということらしい。
このジグスお父さん、インドはラジャスタンのボーディングスクール(私立の寄宿学校)卒業後、ムンバイの新聞社「The Times of India」でレストランやインド料理について執筆していたコラムニストでありジャーナリスト。
世界中のシェフから「インド料理のバイブル」とも呼ばれる「Prashad」という本をはじめたくさんの著書があり、テレビ司会者、ジャーナリスト、レストラン実業家として活躍。
そしてその息子のゾラワラさんもまた、アメリカでMBA取得後シェフでは無くレストラン実業家としてインド料理界を牽引。
彼は新婚旅行でスペインに行った際、世界一予約の取れないレストランと言われた「エルブジ」で初めて分子料理を食べ衝撃を受けたのだそう。
分子料理的な要素も含め、世界の料理とインド料理のフュージョン料理、コンテンポラリー(現代的)なインド料理で、インドのみならず世界的にレストランブランドを展開しています。
また、人気の料理コンペ番組、マスターシェフのホストとしてもメディアに登場するセレブでもあります。
こちらの動画はヒンディー語で何を言っているのか分かりませんが・・・左がゾラワラさん。
テレビ番組の「マスターシェフ 」は、「料理の鉄人」的な料理コンペ番組。
イギリスから始まり、世界40か国以上の各国版があります。
インド版シーズン5でイケメンセレブシェフ2人と一緒にホストを務めています。
そんな彼がプロデュースするレストランでは、信頼する腕利きのシェフにどんな料理が作りたいか相談し、数々のイリュージョンが生まれているのだそう。
トラディショナルなインド料理の専門知識の宝庫だった父と、それを基礎に現代風に進化させて世界に進出する息子。
インドの経済発展とともに、インド料理も凄い勢いで発展していますね・・・。
訪問日:2023年1月31日
基本情報
お店の基本情報です。
メニューの内容は定期的に変わります。
営業時間にも変動がありますので、お店のHP要確認。
・ E-mail restaurant@farzilondon.com
・ 店舗ウェブサイト http://www.farzilondon.com/
電話番号 | +44(0)20 39810090 |
営業時間 | 火曜 ~ 木曜 12:00 - 22:00 |
金曜・土曜 1200 - 23:00 | |
日曜 13:00 - 21:00 | |
定休日 | 月曜 |
住所 | 8 Haymarket, London SW1Y 4BP |
アクセス | 地下鉄ピカデリーサーカスから徒歩3分、チャリングクロス駅から徒歩5分 |