「ベナレス」と言えばロンドンのモダンインディアンの筆頭とも言える有名店。
メイフェアの一等地にあり、長年星をキープしてきた安定感のあるイメージ。
こちらにはコロナ禍のロックダウンが段階的に解除された2021年6月、ランチで訪れたのですが、まだカレーブログも始めていなかったので、あまり下調べせずに行きました。
後から調べてみるとお店のオーナーシェフが代わっていたんですね。
インド料理で初めてミシュランスターを獲得した2人のインド人シェフのうちの1人、アトゥル・コッチャー【Atul Kochhar】が独立して始めたお店だったのですが・・・。
アトゥルさんが去った後、2019‐20でミシュランの星を落とし、翌年に復活しています。
詳しくはこちらの記事⇩にまとめまています。
今振り返ると、アトゥルさんが去り、更にコロナ禍の只中で特殊な状況だった訳ですが、せっかくランチコースにワインペアリングをつけて食べてみたので、感想をまとめてみました。
カレーとワインのペアリングランチ、2コース
この頃は、まだ屋内で6名までの飲食が可能になったばかり。
メニューも自分の携帯でQRコードから確認したり、席間も十分にスペースを確保していたり、お店の人も万全な対策を取っていました。
今回はランチで2コースとワインペアリング。
突き出しとして出てくるパパダムもひと味ちがってオシャレ。
左のマンゴーとベリーのチャツネがとっても美味しくて、気に入りました。
通常は、前菜が来る前に下げられるものですが、お店の方に頼んでそのままテーブルにキープ。
これはお店で売っていたら買いたいくらい。
前菜はスコットランド産ホタテのウマミチャート。
チャートはストリートフードによくある軽食のこと。
「生のホタテだけど大丈夫?」とお店の人が念のため確認。
生の魚介類がチャートで出てくるというのは、南アジア系の人には奇妙なんだろうと思います。
いやいや、日本人ですからね、生魚上等、愚問ですよ・・・と思っていたら・・・。
大量の塩と海藻に乗った不思議ないでたちのホタテがきました。
アラレ的なものが載っています。
これは和を意識している感じでしょうか。
ウマミ=旨味のチャートですしね。
ひとくち目、若干の生臭さがあったものの、イチジクとタマリンドのソースは甘酸っぱさが絶妙。
当時まだコロナ禍の影響で客足もまばらだったり、そもそもシーフードの専門店でも無いので、生の魚介は鮮度的に難しいですよね・・・。
ホタテに合わせて頂いたワインは、ギリシャのヴィオニエ。
タマリンドやスパイスの主張の強い風味を包み込むようなオイリーな口当たりに長い余韻。
ギリシャのワイン、地味に良いのが多いですよね。面白い。
メインは鱈とムール貝のココナツカレー。
米と豆の蒸しパン、イドゥリと一緒に。
マイルドな辛さでクリーミー。
こちらに合わせて出てきたのは、アルザスのゲヴュルツトラミネール。
レストランのシグニチャー(看板)ワインで、ラベルにもレストランの名前が入っています。
品種名ゲヴュルツトラミネールの、Gewurzはドイツ語でスパイスの意味。
スパイスやココナッツの甘い香りにもバッチリマッチ。
バラのような香りもあってココナツベースのカレーがオシャレに引き立ちます。
前菜もメインも、量的にはお上品サイズだったのですが、ワインと一緒にゆっくり食べたので、とても満足感がありました。
デザートはどうしよか迷いましたが、既に飲んでいい気分になっていたので、スキップしました。
お口直しのマンゴーのマカロン。
頼んでないものがオマケで出てくると、なんだかハッピーな気分になりますよね。
今回はどちらもシーフードにしたけれど、肉系で赤ワインも試してみたい。
昼間から幸せなひと時でした。
接待、商談、ミーティング、パーティー・・・いろいろ使えるお店
こちらのお店、メイフェアの超一等地のビルの2階にあります。
1階に入っているフェラーリの美しい車を横目に見つつ、右側入口から入るとレセプショニストが2階に案内してくれます。
階段を上がると池のイメージ(?)の水にお花が浮かんでいたり・・・。
バーエリアもゆったり。
恐ろしく高級エリアなのに無駄なスペース(!)がたっぷり。
オープンキッチンのシェフズテーブルや、400以上のワインが並んだソムリエズルームなど、個室も完備で商談やらパーティーやら、何でも来いですね。
⇩店内写真を撮っていなかったので、Googleストリートビューでどうぞ。
現在のエグゼクティブシェフはサミール・タネジャ【Sameer Taneja】
View this post on Instagram
現在、アトゥルさんに代わってレストランを統括しているのは、以前アトゥルさんの下でヘッドシェフとして働いていたサミールさん。
独立してコベントガーデンにTallie Joeというお店を出したのですが、2019年にお店を閉めることに・・・。
時を同じくして、アトゥルさんのツイッター大炎上事件があり、アトゥルさんが去った後、長年保持していたミシュラン1つ星を落としまいます。
そこで呼び戻されたのが、現エグゼクティブ・シェフのサミール・タネジャ【Sameer Taneja】。
しかし、プレッシャーに負けず、翌年しっかり星を取り戻した彼は、チャンスをモノにする男ですよね。
ビッグチャンスをモノにした秘訣とは?
「インドでは、ほとんどの親が、子供に医者やエンジニア、パイロットなんかになってほしいと望んでいるけれど、私は勉強が得意じゃやなかったんです。その頃ホテル・レストラン業界は上向きで、『あまり勉強しなくても大丈夫』という話を耳にして、偶然にこの道に進むことになりました。」とデリー出身のサミールさん。
南インドの海岸沿いの町、マンガロールのホテルマネージメント専門学校で学ぶことになり、パンジャブ料理を食べて育った彼は、全く違うスタイルの南インド料理に感銘を受けます。
インドの一流ホテルチェーン、オベロイのRajvilas Jaipurで研鑽を積みつつ、キッチンのヨーロッパ人シェフからミシュランガイドのことや、スターシェフ、アラン・デュカス、ミシェル・ルーなどについて教えてもらい、シェフという仕事は誇りをもつべき仕事なんだということに気付かされたそう。
その後世界中のレストランに手紙を書き、職を得て渡英、ミシュラン3つ星のWaterside Innなどで、フランス料理の腕を磨きます。
更に彼のシェフとしてのターニングポイントとなるのは、3つ星シェフ、ピエール・コフマンでとの出会いでした。
インドにいた頃から憧れていたシェフの下で働くことになり、夢がかなったのもつかの間、師匠から、フランス料理はやめた方が良いと言われ、ショックで子供の様にに泣いてしまったそう。
その後師匠の元に戻ると、フランス料理の技量の問題ではなく、スパイスをを使って自分自身のスタイルを築くことが出来れば、歴史に残るシェフになれるという助言だったのだとか。
フレンチとモダンヨーロピアン専門のシェフとして料理の仕事をしてきたサミールさん、実はインドにいた頃から2011年に至るまで、インド料理をプロとして料理したことは無かったそう。
・・・にも関わらず、師匠の助言をすぐに受け入れ、アトゥルさんの元、ヘッドシェフとしてベナレスで働くことに。
そして数年後、前述した通り独立しましたが、閉店してしまい・・・。
6か月もの休暇を取り、シェフの仕事を辞めようかとさえ考えていたその時に、チャンスの超ビッグウェーブがやってきたということですね・・・。
View this post on Instagram
彼のインスタグラムの投稿より、
コンフォートゾーンに身を置かず、常に挑戦して学べるだけ学び、経験できるだけ経験してきた。
人生、人間関係、仕事においても、忍耐や根気、我慢強さが成長の鍵。
未知の領域に一歩踏み出して、成功を見つけよう!
謙虚であれば、周りから引き立てられ、助言も貰える。
助言を素直に受け止めれば、新しい気付きや経験、学びが得られる。
我慢強く根気よく頑張り続ければ、チャンスが来た時にしっかりとつかみ取れる。
そういうことでしょうか。
サミールさんのもと新たに進化するベナレスに期待
そんな謙虚なサミールさんですが、実は2015年のエリザベス女王のお誕生日祝いの一環として料理を担当するなど、実力派であることは間違いなし。
また、ベナレスでの商品開発にあたって、インスピレーションを得るために、週に一回、キッチンで働くすべてのシェフの家庭料理を持ってくるように頼んでいるそうです。
サミールさんの創り出す新しいインド料理に期待しています!
訪問日:2021年6月2日
基本情報
お店の基本情報です。
ランチメニューの内容は定期的に変わります。
営業時間にも変動がありますので、お店のHPなど要確認。
・ E-mail reservations@benaresrestaurant.co.uk
・ 店舗ウェブサイト http://www.benaresrestaurant.com/
電話番号 | +44(0)20 76298886 |
営業時間 | ランチ:12:00 - 14:30 |
ディナー:17:30 - 22:30 | |
定休日 | 日曜・月曜 |
住所 | 12a Berkeley Square, London W1J 6BS |
アクセス | 地下鉄グリーンパーク駅から徒歩5分、ボンドストリート駅から徒歩8分 |